本人が混乱しないで適切な誘導をする、自宅で行える練習を考える
admin2024-07-29T07:18:06+00:00施設名:アシストジャパン デイサービスセンター3号館
サービス提供地域:松山市
診断名:失語症
脳卒中後遺症者において、ご家族の方が日常生活を送るうえで問題となる一つの要因として失語症があります。
今回の症例は、失語症を呈し、発症より7年経過した左片麻痺の男性です。
退院時はT字杖+装具で歩行は屋内自立レベル、玄関には段差があったが、越えることは可能でした。
今回の相談内容は、この最近歩行が困難になった結果、ご家族の介助量も増えてきており、本人も自信を失っていました。
【評価場面】立位をとり、歩行を行っていくにつれて右側(非麻痺側)へ偏よる特徴がありました(写真①)。
このように、麻痺側への荷重が困難なケースは、非麻痺側に偏位することが多くなります。その結果、非麻痺側の体幹・下肢の筋緊張も高くなり、混乱しやすい状態となり、特に立位場面では先行した恐怖感が強く、言語指示は負担になっている印象でありました。
【問題点】立位の場面では、こちらの意図が伝わること、非麻痺側が頑張りすぎない程度に介助を適切に行えば、安全に立つことができる潜在性があります(写真②)。
その際、荷重不足のために不使用となった麻痺側下肢は筋力強化をする必要性がありました。具体的には大腿四頭筋とハムストリングスの協調性につながる筋出力の向上です。これは立ち上がり動作などに必要な要素でもあります。
【目標】今回は、本人が混乱しないで適切な誘導をする、自宅で行える練習を考えることの二点としました。
【介入場面】麻痺側の下肢においては、上記で述べたように筋出力の低下が股・膝関節に見られていたため、立ち上がり動作における下肢の伸展運動の練習を行いました(写真③)。
この時、ただ膝関節を伸ばすのではなく、股関節屈筋群の伸張と膝関節の生理的な関節運動を促しながら行うことを重視しました。また、本症例は車いすに座って過ごされていることが多いため、背中や骨盤周囲にあるハムストリングスの筋肉をストレッチで伸張する自主訓練を行いました。
結果の歩行では、練習を行った部分では荷重ができるようになりましたが、麻痺側の膝折れが強くなり、装具と自身の身体機能が合致していない点が把握できました(写真⑤、⑥)。
このように生活期では、何年か経過した症例においては、退院時に作成した装具や杖などが身体機能に合致していない可能性があります。よって、訪問看護ではこうした身体機能と併せて補装具や環境面への配慮が必要となります。
その結果、失語症を伴っていても、本人が混乱することなく動けることが可能になると思われます。
平成30年10月14日 症例検討会