頸髄損傷受傷後10年経過した症例
admin2024-07-29T06:12:41+00:00施設名:アシストジャパン デイサービスセンター3号館
サービス提供地域:松山市
75歳 男性
診断名:頸髄損傷(10年前)、左大腿骨骨折(2年前)
今回の症例は10年前に転倒により頸髄損傷を受傷された症例です。
受傷後、自宅での生活や歩行は自立レベルで出来ていましたが、2年前に転倒され、左大腿骨骨折(人工骨頭置換術施行)をされてから、移動時は杖と車椅子を使用される生活を送られており、週6回のデイサービスの利用をされています。
立ち上がり動作では、重心を前上方に移動させることが難しく、左側骨盤帯を後方へ引き、体幹・下肢を屈曲位にすることでバランスを保たれていました。(写真①)
歩行では、左側下肢への重心偏移とバランスの保持が難しく、歩幅に左右差が見られ、方向転換や座っていく動作では、重心の偏移に対応するための協調的な筋活動や股関節周囲筋群の筋力低下が見られ、転倒の恐れが見られました(写真②)。
リハ場面では、左側体幹の腹斜筋、腹直筋、腸骨筋、大殿筋等に大腿骨骨折後の不動などから起因する筋の短縮と筋力低下が左側を中心に見られた為、側臥位にて体幹筋群の協調的な筋活動の再学習と股関節伸筋群、膝伸筋群の活動性の改善を図りました(写真③)。
次に左右への寝返り場面では日常の活動量の低下による筋活動の低下により、寝返りにくさが見られたため、腹部前面筋群を強調した寝返り動作を行うことで、股関節伸筋群の活動量の増加が見られました。(写真④)
立位場面では、上肢活動と体幹や股関節・膝関節の抗重力伸展活動を促通した中で、重心移動を伴いながらバランスを保っていく練習を行いました。この時、上半身が動揺する症状が見られました。この症状には、ご本人も気づかれていなかったようです(写真⑤)。抗重力姿位での活動では、左股関節を内側に引き付けながらバランスを取られるため、背臥位にて股関節と膝関節の選択的な筋の収縮と、立位にて右下肢を振り出す動作を行いました(写真⑥⑦)。
リハ後、歩行時の右下肢の振り出しの拡大が確認でき、それに伴う歩行速度の改善が見られました。また車いすに座っていく動作では、自身でゆっくりとスムーズに座っていく動作が出来やすくなりました(写真⑧⑨)。
平成30年3月4日 症例検討会